さよならリミットブルー

「………楽しくないなんて思ってないよ?」


カタカタと揺れる機内で、北上さんの声がはっきりと俺の耳まで届いた。


は………?

なに言ってるんだこの人はという思いが頭に浮かぶ。

こんな俺と一緒に居て楽しいはずがないだろう?

会話も続かない、顔はずっと無表情、気を使ってくれてる相手に感謝もしない。

それなのに………なんだよこの人………。



「久しぶりに碧人とデートしてるんだもん。楽しくて仕方ないよ、わたしは」



太陽のように眩しく見えた北上さんの笑顔。


「なっ、なん………ーーーーっ、」

「きゃああああ!!!」


問いかけた言葉は全て吐き出す前に、口の中で飲み込んだ。

タイミングよくジェットコースターが急降下してしまうから言うに言えなかった。


っ………風が……。


頬をかすめる鋭い風の感覚がなんだか懐かしい。

この風を浴びる感覚を、俺はもしかしたら知っているのかもしれない。
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