さよならリミットブルー
「んーっ、意外とスピード速くてびっくりしちゃった。髪の毛ぼさぼさだよ〜」
俺に思いっきり背中を向けながら、北上さんの特徴である柔らかな猫っ毛を手櫛で直していた。
ジェットコースターを降りたばかりの俺たちの間には1歩、いや3歩ほどの距離がある。
北上さんにつられて風で乱れた自分の髪の毛も気になってきたが、今はそんなこと後回しでいい。
「さっきの言葉、どういう意味だ?」
「ん?さっきの言葉って?」
………っ。
おもむろに振り返る北上さんの姿に、思わずドキンと心臓が飛び跳ねた。
今のはたぶん、不可抗力。
「だから俺と一緒に居てなんで楽しいと思えるんだよ……!」
さっきから自分のペースが乱されて落ち着かない。
そんな、宝物を見るような目で俺を見てくるから………。
この目、苦手だ。
「あぁ、そのことね」
さっきまで離れていた距離を急に詰められると、なんだか変な感じがする。
逃げるわけにもいかず、震えそうになる足を必死に堪えた。