さよならリミットブルー
「さっきも言ったでしょ?わたしは碧人と一緒に居るこの時間が幸せでたまらないの」
北上さんの言葉には迷いがない。
あまりにも真っ直ぐで純粋すぎるから、妙にドキッとする。
「また会えて嬉しかった」
………あぁ、そうだったのか。
今になってようやく北上さんのことがわかった気がした。
北上さんは俺のことをずっと忘れないでいてくれたんだ。
たぶん、全てを失ったあの日からずっと………。
俺は忘れた過去を捨てて生きようとしていたのに、北上さんは大切にしてくれていたんだ。
北上さんの笑顔を見ていたらそんな気持ちが十分すぎるほど伝わってきた。
「碧人ってさ、本当にわたしのこと覚えてないんだよね………?」
つい数秒前までは明るく笑っていたはずの北上さんの表情が、一瞬にして黒く染まる。
北上さんを悲しませているのは俺だ。
「ごめん……」
それなのに気を使う言葉が1つも出てこない。
俺はただ、謝ることしかできなかった。