さよならリミットブルー
嘘だよ…………。
こんな偶然があるなんて。
「お待ちかねの転校生くんだぞー」
先生の挑発した声も、クラスメイトが響かせる黄色い声も、何もかもが気にならない。
自分の鼓動しか聞こえないほど、わたしは“彼”に釘付けだった。
「じゃあ、自己紹介から」
「………日野碧人(ひのあおと)です」
幻かと思った。
何度会いたいと願っても、そんなこと不可能だろうと諦めていたから。
偶然なんか起こるわけないって。
「日野はあの窓側の席な」
「はい」
ちょうどわたしの席の横を通ったときに香る甘い香り。
間違いない。
昨日、公園で会ったあの人だ。
開けっ放しの窓から吹き込んだ風が、日野碧人くんの髪の毛をふわりと触った。
艶のある黒髪が風に揺れてすごく綺麗。
ーーーーって、あれ。
揺れる髪の毛の隙間から、左耳にだけあいているピアスホールが見えた。
普通あけるなら両耳だよね?なんだろう、オシャレかな。
聞きたいことは他にもたくさんあるけれど。
わたしのこと、覚えてくれてるといいな。