さよならリミットブルー

北上さんは強い。

こんなに傷つけていても尚、俺を気遣って笑ってる。

もしかしたら昔の俺は、そんな強い北上さんに惹かれたのかもしれない。


「あぁ……」


過去を思い出すことが怖くないわけじゃない。

今の平穏な日常を手放してまで思い出す価値があるのかと考えてしまうときがある。


それでも、あの日芽衣子と約束したから。

芽衣子と一緒になら前を向いて生きていけると思ったから。


俺は自分を信じてる。


「じゃあ、この話は終わり!芽衣子ちゃんのお土産買いに行こう」

「うぉっ……!」


さっきまで泣きそうな顔をしていたのに、その面影はどこにも見当たらない。

俺の腕を引っ張って「早くっ!」と元気に笑ってくる。


ふっ………。

おせっかいな芽衣子よりずっと良い女じゃないか。

そう思うのに、俺はどうしようもなく芽衣子が好きだった。


もしも過去を思い出せたそのときは、俺が悲しませた分だけ北上さんを笑顔にさせてあげたい。

友達として北上さんを幸せにしたいと心から思う。


…………記憶を思い出す理由がまた1つ増えたな。
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