さよならリミットブルー
繋いだ手は離さないで
こんな風にコソコソと遊園地を歩くのは生まれて初めてだ。
前が見えないくらい目深に被られた帽子に、暑苦しいマスクなんかつけて。
ううっ……暑いし苦しい…………。
額から吹き出る汗を何度拭ったことか。
あーあ。
華の女子高生が夏休みをこんなストーカーみたいなことに使っていいのかな?
お父さんから貰った遊園地のチケットだって入場するときに使ったくらいで、肝心のアトラクションには1つも乗っていない。
さすがに1人でアトラクションに乗るのは気が引けるし、変な格好をした女が遊園地をウロついてるだけでも十分怪しいのに。
1人で乗ったら、さらに目立つ決まってる。
小さい子どもに何度指を差されたことか。
「はぁ……」
まぁ、遊園地を1人で周っていることに関しては自分で決めたことだから別にどうだっていい。
こんなにため息が出るのは自分の鈍臭さに呆れてしまったからだ。
キョロキョロと1度辺りを見渡して、ため息を繰り返す。
うん。やっぱり居ない。
「ーーーー見失っちゃった」