さよならリミットブルー

なんでわざわざこっちに来るの!?

わたし騙されやすいんだから、タチの悪い冗談はやめてよ。


「ちっ、近いよ…………」


そう叫んでやりたいのに上手く口が回らない。


「近づいたんだから当たり前だろ」


碧人くんが隣にいるのは慣れっ子なはずなのに、今日はドキドキして落ち着かない。

友達なのに。

なんでこんな意識しちゃうの?


「もうすぐ頂上だけど………どうする?」


どうするって………。

そんなの答えはノーに決まってる。


「願い事なんて……ない、から」


嘘。

あるよ。


碧人くんの記憶が戻りますようにって。

記憶が戻ってもずっと碧人くんの隣に居られますようにって。

わたしの贅沢な願い事。


キスしたくらいで叶う程度の願いなら、こんなに悩んだりしないもの。

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