さよならリミットブルー
……そうだ、碧人くんは知らないんだ。
だってあの時、碧人くんは隣にいなかったから。
「やっぱりなんでもない!」
事故に遭う直前に貰ったあのピアスのことを今伝えていいはずがないよね。
確かに記憶を思い出すきっかけとしては十分だけど、碧人くんに掛かる負担が大きすぎる。
なんとか誤魔化さなきゃ………。
「あの……」
「ごめん。知ってた」
「えっ」
「知ってたというか、なんとなく気づいてた。あのピアスは北上さんと関係してるものだって」
わたしが適当な言葉を繋げるまでもなかったらしい。
落ち着いた顔つきで、落ち着いた声色で、碧人くんは笑う。
「だから、遠慮して隠さなくたっていい。俺はもう覚悟を決めてるから」
それは前向きなようで後ろ向きにも聞こえる、言葉の意図が掴めない不思議な言葉。
覚悟ってなに………?
そんなの……碧人くんは前からずっと思い出すって決めてたじゃん。
今更なんで口にするの。
決意の裏に隠された真実をわたしはもう知ることはできない。
なんか、うまく笑えないや。