さよならリミットブルー

「ほら、碧人は親の顔も名前も忘れてしまったでしょう?だから口数も少なくなっていたんだけど………」


切なそうに瞳を揺らしているのに対して表情はとても柔らかく、碧人くんを本当に大切にしているのだと伝わってくる。

碧人くんのお母さんは優しくて素敵な人なんだとすぐに理解できた。


「そんな碧人か唯一話してくれる人の名前が二宮さんのことだったの。「面白い友達ができた」って」


穏やかに微笑む碧人くんのお母さんの口から出た声はわたしにとって、とても衝撃的な言葉だった。

…………碧人くんがわたしのことを?

だって、当然初耳だもの。


「二宮さんと碧人は本当に仲が良かったのね」


っ……どうしよう…………泣いちゃいそうだよ。


碧人くんがわたしを友達として真っ直ぐに見ていてくれたことが嬉しくて。

家族とは距離感が掴みにくいもどかしい関係だったはずなのに、碧人くんの背中を押しきれてないわたしを話してくれていたことに驚いて。


特別な関係になれていたことに胸を熱く焦がされた。

嬉しすぎて泣いちゃうよ。


「記憶が戻っても変わらず碧人と仲良くしてくれるかしら……?」

「もちろんです!」


返事に迷いはなかった。

碧人くんの側を離れる選択肢がわたしにはないから。
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