さよならリミットブルー

ーーバンッ


「誰だっ……!」


振り返った日野くんと目が合った。


屋上に何の用があるのだろうと思っていたけれど。まさか。


「泣いてるの……?」


まさか泣いてるなんて、思ってもいなかった。

一粒の雫が日野くんの頬を流れ、夕焼けに溶けてキラリと光を灯していた。

なにか気の利いたひと言でも言おうとしたけれど、突飛に出た言葉は、どうしようもないくらいありきたりなもの。

語彙力の無さに今更公開が募る。


「………お前には関係ない」


流れていた涙を強引に擦り取ると、すぐ表情を曇らせた。

昨日はあんなに眩しかったのに、どうしてそんな顔をするの?

日野くんは笑顔の方が似合うのに。


「その……えっと……」


日野くんの顔を見て落ち込んでる場合じゃない。

なんのために追いかけたのか、忘れてしまうところだった。


「昨日、公園でピアス拾ったんだけど、日野くんの物じゃないかな?」


鞄から取り出したピアスを日野くんに向かって差し出すと、


「もしかして昨日の…………」


わたしのことをまだ覚えていた。


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