さよならリミットブルー
まるで、地面に足が縫い付けられたように、ピタリと足が動かなくなる。
そして次の瞬間、前触れもなく誰かの声が脳内に響いた。
「碧人くん」
聞こえたのは、俺の名前だ。
ついさっきまで何もなかった空間に浮かんでくるのは、知らない1人の女の子。
なぜか視界は歪んでいて、顔はよく見えない。
「っ……」
夢の中のあの子はいつも泣いている。
必死に声を押し殺してすすり泣く姿がやけに苦しそうに見えて、胸が痛んだ。
涙のワケはわからない。
手を伸ばしても届かなくて、側に行くことすらも叶わない。
俺は、どう足掻いてもあの子の涙を拭うことすらできないんだ。
「泣くなよ……」
キミは誰。
自分でもよくわからないけれど。
キミが涙を流すたび、俺はとても悲しくなる。