さよならリミットブルー
これほど毎日のように夢に出てくるのだから、知り合いなんじゃないのかと考えたが、やはり心当たりはない。
俺が勝手に創り上げた架空の人物なのだろうか。
それなら、どうして泣いているんだろう。
泣かせているのは俺なのか………?
『碧人くん』
聞いたことがあるような、ないような、曖昧な記憶を霞む声。
あの子と話せれば謎が解けるかもしれないのに、夢の中の俺はいつも無力だ。
動けるのは最初のほんの数秒間だけ。
あの子が現れると途端に体は動かなくなるから、近くに来るなと言われているような気分になる。
彼女でもなんでもない、夢の中の人物をこれほど気にしてしまうなんて、瑠璃に言ったら浮気だと思われるかな。
…なんてな。
たくさん心配をかけたから、もう瑠璃を泣かせるようなことはしなくない。
目が覚めたときに見たあの泣き顔を、もう2度と見ることがないように、瑠璃をずっと守り続けようと誓った。
左耳に揺れるラピスラズリに強く願いを込め直して。
「そういえば、目が覚めたときに見たことないヤツが居たな……」
母さんと父さんと瑠璃の他にもう1人。
目覚めたばかりに見た曖昧な記憶だが、たぶん女の子だったと思う。
今では顔も思い出せないけど、なんであのとき……病室に居たんだろうな。