さよならリミットブルー

瑠璃の友達?母さんや父さんの知り合い?


そういえば、なんとなく夢に出てくるあの子に雰囲気が似ていたような、似ていないような。


………俺の記臆はかなり曖昧だ。


事故の後遺症というわけではないが、数ヶ月間眠り続けていたせいで、脳が上手く記憶を処理してくれない。


いくつか記臆が抜け落ちていて、目が覚めたばかりの日のことは、今でも表面的にしか思い出せなかった。


母さんと父さんと瑠璃の3人の泣き顔とか。

担当の先生にされた変な質問とか。


たしか、『あなたの名前を教えて下さい』……だっけ。


眠り続けていたからとはいえ、俺の頭はそこまで悪くない。

医者にしかわからない重要なことを知る質問だったのかもしれないけれど、患者側からしてみれば、おかしくて笑ってしまう。

まるで俺が、自分の名前を知らないような言い方だ。


「………自分の名前を忘れるわけないのに」


それから俺は、瑠璃が来るまでの間に朝食済ませ、ぼんやりと病室で暇を持て余していた。
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