さよならリミットブルー

それから瑠璃は、何かの小説を読むように、ゆっくりと俺の身に起こった出来事を教えてくれた。


交通事故に遭った後、俺はこれまでずっと眠っていたわけじゃなかった。

特に後遺症になるような怪我は無かったけれど、強く頭を打ったせいで今まで過ごした記憶を全部忘れてしまったらしい。

そして記憶を無くした俺は両親と共に島を出て、新しい生活を求めた。

そこで出会ったのが目覚めた時、俺の病室に居たあの子。


ーーー二宮芽衣子。


彼女は俺の事情を知り、記憶を取り戻す手伝いをしてくれた。

変な作戦をたくさん考えて、島まで行って瑠璃と出会って、俺と瑠璃のためにデートまで企画して。

そして、パワーストーンの店で倒れた俺は病室で目を覚ますと、今度は記憶を失っていた頃の記憶を忘れていた。


「これが碧人が忘れていた全部だよ。といっても芽衣子ちゃんから聞いた話ばかりだから、わたしも詳しくは知らないんだけどね」


「そうか……」


急に言われても実感は湧かない。

本当に今の話は全部俺のことなんだよな……。

どこかの変な夢物語みたいだ。
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