さよならリミットブルー

そう言って俺を見る瑠璃の瞳はとても澄んでいて、それ以上何も言えなかった。

瑠璃は俺を想って自ら身を引こうとしているのに、それなのに……。


見ていたはずの長い夢は、夢なんかじゃなかった。

俺の知らない俺が生きていた頃の話。

もう1人の、日野碧人の人生。

二宮芽衣子を拒むというなら、俺自身から逃げてるのも同然。


大切な人をこれ以上ないくらい悲しませたのに、俺はまた誰かを泣かせるのか?


「じゃあ、わたしはそろそろ帰るね」

「え、まだ昼だぞ?もう少し一緒に……」


どうにか引きとめようにも、瑠璃は首を縦に振ってはくれない。

それどころか、ニコッと笑顔を浮かべて言うんだ。


「碧人が本当の自分を取り戻したら、また会いに来るよ。

そのときは友達としてね!」


言葉に迷いは感じなかった。


あぁ、終わるんだ。

瑠璃と過ごした日々が今、終わる。


扉の向こうに消えていく瑠璃を追いかけることもしないまま、俺はひとり病室に取り残された。
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