さよならリミットブルー

そして、今の俺は二宮芽衣子からこの笑顔を奪っているかもしれない。


ーー泣かせたくないのに。


こいつにはいつも笑っていて欲しかった。

どうしてかはわからないけれど、確かにそう思う。

俺のために必死になって、おせっかいばかり焼いて、どれも失敗ばかりで…….。

よく覚えてないけれど、二宮芽衣子はたぶんそんなヤツだ。


写真1枚で全てを思い出せるわけがないし、これから先記憶を取り戻すことは不可能かもしれない。

二宮芽衣子と過ごした思い出は泡のように消えたまま、2度と俺の元に返らない。

それでも、戻らないからって捨てていいわけがないんだ。


「会いたい……」


今なら真剣に向き合える気がする。

たとえ泣かせているのが俺だとしても、側に行って抱きしめて、「泣くなよ」って涙を拭ってやりたい。


もう、迷いは無かった。


「二宮芽衣子」


キミのことを思い出したわけでもないし、恋愛感情だってない。


けれど俺は………。

今、たまらなくキミに会いたい。
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