さよならリミットブルー

さよならの告白


懐かしい潮の香りが鼻を掠めた。

深く息を吸い込めば、気持ちの良い空気が身体中に巡っていく。


「なんだか久しぶりな気がするなぁ……」


ここは碧人くんと北上さんが生まれた島。

そして、碧人くんと記憶を取り戻すために訪れた場所。


けれど、今日ここに立っているのはわたしひとり。

隣を見ても、いつも側に居てくれた碧人くんの姿はない。

ヒュウッと吹く風が寂しそうに聞こえるのは、今のわたしが寂しさに震えているから。


毎日のように会っていた碧人くんが急に消えてしまって、寂しくてたまらない。

この島は碧人くんを思い出させるから辛くなる。


「………落ち込んでも仕方ないか」


わざわざ3時間も掛けてここに来たのは、寂しさを感じるためではない。

会えない碧人くんに会うためだ。


言葉にすると難しいけれど、碧人くんに会うことが叶わないから、せめて約束をした場所に来ようと思った。

この島は、わたしにとっても特別な場所だから。


「よし、行こう!」

と、強引に気合を入れて1歩前を踏み出した。
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