さよならリミットブルー
“日野碧人”という1人の人間にただ惹かれているんだ。
あの日から、ずっと。
日野くんの優しさに触れた日から、ずっと。
「………」
日野くんから返事はなかった。
何か言いたそうな顔をしているのに、微かに開いた口元からはなんの音も出ていない。
………答えなんて、聞かなくてもわかってる。
1度も良い返事が返ってきたことがないなら、今日だって同じでしょう。
「ピアス……受け取ってよ」
沈黙に耐え切れず、持っていたピアスをもう1度差し出した。
こんなに綺麗な青色のピアスなのに、どうして受け取ってくれないの。
それは、左耳しかあいていないピアスホールと何か関係がある?
「ーーーいらないって言っただろ!!」
手から弾けたピアスは日野くんの手によって窓の外へと宙を描き、
「あっ……」
計算されていたかのようにプールの中へと落下した。
「これに懲りたらさっさと帰れ……」