さよならリミットブルー

「わっ……結構風冷たい」


夏前の肌寒いこの季節にプールに入るなんて、ただの罰ゲームみたいだ。

わたしだって入りたくて入るわけじゃないんだし、罰ゲームと同じだよ。


ぶつぶつ文句を言いながら靴とソックスも脱ぎ終わり、着ているのはスカートとブラウスのみ。


「ふぅ……」


焦るのはよくない。

落ち着いてやればきっとすぐに終わるよね。


1度息を吐いてからゆっくり片足を水の中に入れようとした瞬間、

「わっ!」

近くにあった僅かな段差に気づかず体は宙に浮いた。


ドボーン!と大きな音と共にビリビリと冷たい感覚が身体中を巡らせる。


「つ、冷たぁっ………」


冷凍庫の中に閉じ込められたみたい。勢いで髪の毛までびしょ濡れだ。

5月のプールをあまく見ていた。


「もー、日野くんのせいなんだからね!」


諦めるという選択肢はない。

日が沈んで何も見えなくなってしまう前に、ピアスを探し出すんだ。

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