さよならリミットブルー
いつもは寝癖を直す程度にドライヤーを当てるだけだか、今日は久々にヘアアイロンを引っ張り出してみた。
設定温度は高めで、少し癖のついた黒髪はまっすぐなストレートに。
普段はあまりしない化粧も今日だけはバッチリ決めている。
くるんと綺麗な上向きカールになったまつ毛や、キラリと光る唇に塗ったグロス。
まさに今日のわたしは完璧ーーーーーーーー。
「…………痛っ…」
この靴擦れさえ無ければ。
オシャレのためとはいえ、慣れないヒールを履いてきたせいで早々に足を痛めてしまった。
普段履かない靴で歩いた結果がこれだ。一応かなりのスローペースで歩いてはいるけれど、痛みが引く気配はない。
ショッピングモールは諦めて家に引き返した方がいいのはわかってる。
けれど、どうしても気が進まなくて。
今日の良い運勢を足が痛いという理由だけで終わりにしたくなかった。
別に占いを本気で信じているわけではないし、素敵な出会いに期待をしているわけでもない。
出会いという響きがなんとなく恋愛に纏わる話のように聞こえるけれど、生憎わたしは恋愛には疎い方だ。
それなら、どうしてそこまで頑張るの?と聞かれたら答えに迷ってしまうけれど。
本当にただ、なんとなく。それくらいの軽い気持ちだ。
進む足が止まらないから前に行くしかない。
こんなにも無意識に動いてしまうなんて、本当に素敵な出会いがあるんだと誰かに言われているみたい。
そう思うと、少しだけ胸が高鳴った。
迷いながら向かった先に一体何があるんだろう。