さよならリミットブルー
「これ以上過去を思い出したくなくてここまで逃げ出した。捨てたのはピアスだけじゃない」
震える唇で紡ぐ言葉は、
「俺の過去全てだ」
とても悲しいひと言。
5月という中途半端な時期に転校してきた裏には、こんな悲しい真実が隠されていたなんて思ってもいなかった。
「もう誰にも関わりたくなかった。また忘れてしまうのが怖いんだ………」
孤独と戦うキミをどうしたら救えるだろう。
記憶を失う辛さをわたしが知ることはできない。
そんなわたしが何を言ったって、所詮それは表面上だけの慰め。日野くんをもっと独りにするだけだ。
「それなら………」
「辛いよね」とか「頑張らなくていい」とか。そんな言葉ならたくさん言われてきただろう。
それなら変に取り繕うとせず、素直に思ったことを伝えてみてもいいかな。
後ろばかり見る日野くんに、わたしは前を向いてほしいから。
「それなら、どうしてわたしに優しくしてくれたの?」
ようやく言葉が出ると、勢いで日野くんの腕を掴んだ。