さよならリミットブルー
日野くんの笑った顔を見るのは初めて会った時以来だ。
こんなに近くでそんな顔……ずるい。
「記憶喪失だってこと、誰にも言うつもりなかったのに……どうしてだろうな………」
「………え?」
「バカみたいに真っ直ぐで、一生懸命なお前には負けたよ。あの時、ピアスを拾ってくれたのがキミでよかった」
悲しげな瞳の面影は、どこにも見当たらなかった。
ドキンと弾む心臓が苦しい。
「わ、わたしは二宮芽衣子ってちゃんと名前があるんだけどな………」
精一杯の照れ隠しは日野くんに気づかれやしないだろうか。
赤くなる顔は夕焼けのせいにして、緩む顔にはぐっと力を込めた。
「それもそうだな。じゃあ、二宮」
「な、なに………?」
「俺と友達になってくれないか」