さよならリミットブルー

このピアスが日野くんにとって辛い物でしかないことはわかってる。


「っ……あ……っと…」


戸惑ったように何も言わなくなることも想定内。

けれど、わたしは思うんだ。


「失くしたままでいい過去なんてないよ!

忘れられた人がどんなに辛いか、忘れてしまうことがどれほど辛いか……

日野くんが1番わかってるでしょう?」


過去と向き合ってちゃんと受け止めてほしいって。

途中から始まる人生はきっと寂しいから。

日野くんのお母さんやお父さんだって。日野くん自身だって。


もう1度、本当の家族になりたいはずだ。


「わたしがずっと支えてあげる。だから………」


「受け取って」と言おうとしたけれど、最後まで言葉は続かなかった。

言い終わるより先に、日野くんがピアスを取ったせいだ。


「二宮に言われるまでもない。失くしたものは自分で取り戻す」


熱のこもった眼差しは、疑う余地もないほど真剣そのものだった。

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