さよならリミットブルー
碧人くんの記憶を取り戻すため、最近のわたしはたくさんの作戦を実行していた。
今日はその中の1つでもある『びっくりドッキリ驚かせちゃおう作戦!』を試してみたが、見ての通り成果はなし。
他の日も別の作戦を何度か試したけど、記憶を取り戻す以前に碧人くんに冷めた目で見られるだけだった。
あの氷のような視線には心を痛めつけられる。
まず最初に実行した作戦は、落ち着いて深呼吸を繰り返すこと。
焦りを一旦リセットし気持ちを落ち着かせるという方法だ。
なかなか成果が出ないから、思い出すまでやれと無茶振りを言ったら、碧人くんの頭痛を引き起こして終わった。
当然のように効き目はなし。
次は記憶を失った時と同じ状況をつくる作戦。
交通事故の衝撃と言っていたから、もう一度……と思ったけれどさすがに怒られた。
「俺を殺す気か」とデコピンまでくらったし、さすがにこの作戦は中止となった。
それから何度もインターネットや本から情報を集め、毎日頑張ってみたけどそろそろネタ切れ状態。
「次の作戦が思い浮かばない………!」
たくさん作戦を繰り返しているうちにあっという間に6月に入っていて、毎日屋上で碧人くんと過ごすことが日課になっていた。
特に何かするわけでもなく、ただ駄弁るだけ。
それだけでも、わたしにとっては特別な時間だった。