さよならリミットブルー

そういえば、碧人くんが転校してきて1ヶ月近く経つが、未だに絆創膏をくれた人の正体が、碧人くんだったということを桃花に伝えていなかった。


隠してるわけではなかったけど、タイミングを逃して言えてないまま。

碧人くんと一緒にいても「頑張るねぇ」くらいしか言われないし、何か勘違いをしていそうだ。


体育祭で話題を切り出せるタイミングとかないのかな?


例えば借り物競争のお題が他人に絆創膏をあげた人とか。

そうすれば碧人くん…………って、流石にないか。


よくあるお題なら、好きな人とか?

確か毎年1人だけ当たるんだよね。今年はどうなるんだろう。

もしも碧人くんが引いたら……どうするかな。


「ねぇねぇ、碧人くんはさ、借り物競争のお題に「好きな人」って書いてあったらどうする?」


さっきの冷たい反応をされたお返し。

困った顔のひとつでも見てみたい。


そう思い、にやにやした顔で碧人くんに迫ると、


「……………そうだな……」


なぜかぐいっと腕を引っ張られた。


「へっ!?」


顔の距離が近すぎて、碧人くんの吐息が耳にさわりくすぐったい。

こんなに近いと直視できない………!


「俺の好きな人は芽衣子だから、迷わずキミを連れて行くよ」


ーードキン

耳元で響いた声は、一瞬にしてわたしの動きを奪っていった。

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