さよならリミットブルー
きっとこの人もここに座ろうとしていたんだろう。
同時に存在に気付き、同時に声が漏れた。
「あ……えっと………」
困惑した声を発しながらそっと顔を上げる。
すると、そこに立っていたのはわたしと同い年くらいの男の子だった。
綺麗な人……。
艶のある黒髪とビー玉のようなキラキラとした瞳がとても印象的。
今にも消えてしまいそうなほど儚げで透明感のある彼は、芸能人だと言われても疑う余地がないくらい整った顔立ちをしている。
散り始めた桜が宙を舞い、吸い寄せられるように彼を包んでヒラヒラと揺れている。
まるでなにかの映画のワンシーンのよう。
「………どうぞ、座ってください」
「へっ!?」
つい見惚れていたら、心地の良い澄んだ声が聞こえて思わず目を見開いた。
イケメンは容姿だけでなく声までかっこいいものなのか。
変な裏声をあげてしまった自分が恥ずかしい。