さよならリミットブルー

完全に出遅れちゃった。

それに、碧人くんがわたし以外の女の子とこんなに話してる姿は初めて見たかもしれない。


「日野くんってバスケ経験者なの?上手くてびっくりしちゃった」

「いや、別に。体育でやるくらい」

「じゃあ元からの才能ってやつ!?運動神経まで超イケメンってことじゃん!」

「ははっ、なんだよそれ」


楽しそうにお弁当を食べる2人の姿を見ていると、なぜか胸が痛む。

今日だけは桃花が憎く見えて、「彼氏いるくせに碧人くんに媚びないで!」と言いたくなった。


桃花はただのミーハーで、アイドルの追っかけ気分でやってるのはわかってるけどさ………なんでその相手が碧人くんなんだろう。

これってヤキモチ?


「あれっ。ぼーっとしてないで芽衣子も食べていいんだよ?」

「あ、うん。……さすが桃花、美味しそう!」


隙のない桃花は当然料理もお手の物。

普段からお菓子作りもよくしているし、今日のお弁当だって手作りとは思えない程プロ並みの豪華さ。

それに比べてわたしのは…………。出さなくて正解だったな。


早起きして作ったお弁当を見られないよう鞄の中に押し込んで、桃花の作ったお弁当を口に運んだ。


「ほんと……美味しいな」


やっぱり男なら桃花みたいに可愛くて料理まで完璧にできちゃう子に惚れるのかな。

もちろん、碧人くんも……?


別に碧人くんを好きなわけじゃないけれど、羨ましいと正直思う。

わたしも桃花みたいに器用になれたらなぁって、友達ながら憧れる。

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