さよならリミットブルー

キミの瞳にわたしだけが映ればいいのに


ふわりと艶のある黒髪が揺れた。

髪の毛を囲っている白いハチマキも、風を浴びてひらひらと揺れている。

型崩れのない黒い学ランに純白の手袋。


「かっ、かっこいい………」


自然と声が出てしまうほど魅力的だった。

まるで、絵本の中から飛び出してきた王子様みたい。

そんなことをぼんやりと思いながら、目の前に立つ人物を見つめていた。


「………そんなに見るな。こっちは暑いの我慢して着てるっていうのに」

「わっ!」


コツン、と頭に軽い衝撃が降った。


どうやら目の前に立つ彼のゲンコツをくらってしまったらしい。


「仕方ないよ、碧人くん顔だけはいいからね」

「ったく、誰だよ応援服着用なんてくだらない決まり考えたのは………」


ぶつぶつと碧人くんの文句は絶えないが、学ラン姿はとてもよく似合っている。

顔もスタイルも良い人が着るとこんなに様になるんだなぁ。

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