さよならリミットブルー


けれど、それ以上言葉にすることはできなかった。

離れていく彼の背中を眺めているだけで、何もできずに立ち尽くしたまま。


今日はずっとひとりだったはずなのに、彼が居なくなった途端に寂しさを感じる。


もしかして、これが占いにあった素敵な出会い……なのかな。


「綺麗な男の人だった……」


ぽつりと声を落とす。


恋に落ちたわけでも、好きになったわけでもない。

それなのに彼のことが頭から離れなかった。


……なぜだろう。


綺麗な人だったから?優しくしてくれたから?

それとも、運命でも感じたんだろうか。


いくつ理由を思い浮かべても頷けるものがひとつもない。

この歪な感情を表すには、どんな言葉を使えば正解に辿り着けるんだろう。



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