『大好き』と言えたらどんなに幸せだろう。
そんな風とは裏腹に私の気持ちはいつも以上に曇っていた。


明日から新しい生活が始まると言っても何も期待などしてはいない。


もともと積極的なほうでもないし、頭がいいわけでもないし、友達が多いわけでもない。


どちらかというと毎日通い慣れた道を変え、遠い高校に通うのは少し面倒臭いなんて思ってる。




ペットボトルとお菓子と消しゴムをぶら下げて私はさっききた道を戻り始めた。


少しぐらい楽しいことがあったらいいな。



その時、私の前にまたフワッと春風が吹いた。



いつもなら気にしないような風がなんだか気になったのは、その風に香がついていたから。



ミントの香。







私はまるでそれに引き寄せられるかのように振り返る。




そこで見たのは、しゃがみ込んで犬を撫でる男の子だった。
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