独り




……痴漢野郎が正座してうなだれていた。




横に立っていた駅員さんに、この子が被害者です。と言った。




駅員さんは、書類をたくさん持っていた。
そして、ため息をつきながら言った。




「あ~、いいよいいよ、こいつ常習犯だからねー。


次は無いって言ったのに!


しょうがないねぇ〜、出禁だ出禁!


うん、お譲ちゃん怖かっただろー?


でも、まだまだ痴漢なんていっぱいいるからねぇ。


気をつけなよ?


それから、きみ!よくやった!


高校生にしてはよくやったよー!


おじさん助かった!!


うん、この年で痴漢野郎追いかけるなんてキツくてキツくて、ははは!


感謝状でも送るよー。


君たちの名前とか電話番号とか住所とか教えてくれる?


書類書かないといけないからさぁ〜。」




年配の駅員さんは、マシンガントークを繰り広げバサバサと書類をゆらした。




「はい。えっと、私は成瀬愛花(なるせあいか)と言います。あ、これ学生証です。」




「あ、学生証助かるよー!成瀬さんねぇ。君は?」




「あ、俺は、秋野時雨(あきのしぐれ)です。俺も、これ、学生証です。」




「ふーん、秋野くんねー。ん?君達同じ学校だねぇ。もしかして彼氏彼女??ははは!そこまでは聞かないけどねぇ~」




(今聞いたじゃん…)苦笑




「いえ、今日初めて会ったんで。」




「えっ……?」




「へぇー、そうなの?ははは!


まあ、今日は災難だったねぇ。後日また連絡するから!


今日はもう遅いし、帰りなさい。気をつけてねぇ。」




『はい』




…もう9時近い。




「えっと、成瀬さん。もう夜遅いし、家まで送るよ。」




「そんなっ、悪いです!助けていただいて、お時間まで取らせてしまったのに…」




< 2 / 6 >

この作品をシェア

pagetop