独り
「いいんだよ、気にしないで。
こんな時間に一人で帰らせるわけにもいかないし。
それとも、…俺に送られるの嫌?」
「…っ!そんなことないです!嬉しいです!でも、」
「…だめ?いや?」
「えっあの、、嫌じゃ…だめじゃないです…
お言葉に甘えます、ありがとうございます!
すみません気を使わせてしまって…。」
「気にしなくていいよ!困ったときはお互い様って言うだろ?いつか助けてもらうかもしれないしなw」
「は、はい!ありがとうございます!」
二人で話しながら電車に乗る。
意外に人が多かったけれど、満員電車程ではない。
とりあえず、出入口近くのつり革を掴んだ、成瀬さんにはドア側にもたれて俺と向かい合わせになる。
「イエイエ〜。ところでさ、成瀬さん何年?俺一年なんだけど、普通にため語だし。敬語やめようよ。」
「あっえっと、わかった。私も一年だよ。
…秋野君、私のこと覚えてないの?」
「ん?会ったことある?…ごめん、覚えてない。
あ、でも同じ学校で同じ学年だったら顔くらい知ってるよなー。…ごめん。」
「いいの、気にしないで。ちなみに同じクラスだけどね。気にしないでね。アハハ…」
「えっ!マジで?わー、ごめん!俺さ、名前とか覚えるのとか超苦手で。ほんとゴメンな!」
「いいの、そんなに謝らないで!なんとなく秋野君はそんな感じなんだなあって前から思ってたし、気にしてないから!」
(前から…?)
「ありがとう?かな?」
「いいえーっ、あははっ!」
ニコリと笑った彼女は、鈴のような綺麗な声で笑った。
つられて俺も笑う。
「そういえば、家どこらへん?」
「んーっと、この駅から2駅の○○駅でおりて、そこから二十分ほど歩くの。道が家までだいたい真っ直ぐだからわかりやすいよ〜。」
「マジ?俺も○○駅なんだけど。っていうと、案外成瀬さんと家が近いかもな!」
「えっ?ホントに?すごい偶然だねぇ!」
成瀬さんがにっこりと微笑んだのを見てまたドキッとしてしまう。
(さっきからなんなんだろう。俺、どうかしたのかな?成瀬さんの笑顔を見るたびにドキドキするんだけど…なんなんだ??)
少し考えこんでいると、成瀬さんが不思議そうな顔で俺の顔を覗きこんできた。
「…っ!おっ、なに??」(顔が近いっ///)
少し上目使いで、首を傾げながら俺の顔を覗きこむ仕草はとても可愛い。
まるで小動物…(似てるとしたら犬だなw)
「なにって、急に秋野くんがボーッとしてたから。どうかしたの?」
「な、何でもないよ。心配ありがとう!あはは…」
(まさか犬に似てるなんて言えない…苦笑)
見つめられるのが恥ずかしくなり、照れ隠しに軽く微笑むと、成瀬さんはうつむいて足早に歩きだした。
「え?どこいくの?揺れるから危ないよ!」
言ったそばからふらつく成瀬さんを腕を掴んで引き止める。
「きゃっ!…ふぅ、危なかったぁ。
秋野くんありがとう。あの、でもその…///」
顔を真っ赤に染めて話す彼女を見て可愛いなって思った。
「…ゆっくりでいいから。どこかに行こうとしてたの?
揺れて危ないからちゃんと止まってから動きなよ。」