独り




「じゃあ、決まりな!…あ、神社見えてきた。家、もうすぐ?」




「うん、神社の前の道を曲がって、そこから3つ目の角の青い屋根の家だよ。」




「なるほど。…あぁ!なるほど。俺の家、その家の斜め前だ。」




「えっ?えぇーーーっ!?」




「入学式終わってすぐ引っ越してきたんだよ、こっちに。

もともとは✕×街の方に住んでたけど…いろいろあってなw」




「そうなの?じゃあ、一人暮らし…?」




「あぁ、まあ、そうなるね。」




「す、すごいっ!!もう自立してるなんて!」




「自立はしてねぇけどな。親の金だし。」




「でも…っすごいよ!家事とか全部一人でしてるんでしょう?ご飯とかはどうしてるの?」




「んー、そうだけど…飯は作ったり買ったりかな。買うほうが多いけど。」




「作れるの??」




キラキラした眼差しで見つめてくる…




「あっ、いや、野菜炒めとか、簡単なやつだけなw俺あんまり器用じゃないから。」




「そうなの?…野菜炒めかぁ、不足した栄養を補うならそれが一番楽だよね、炒めるだけだし。」




「お、おう。」




「秋野くんの料理、食べてみたいなぁ~っ」




更にキラキラした目で見つめてくる…




「じゃあ今度遊びに来る?なんか作るけど。」




「いいのっ!?やったぁー!ありがとうっ!楽しみにしてるね!


うーん、いつがいいかなぁ?今週末とか、秋野くんあいてる?」




(今更思ったけど、一人暮らしの男の家に女子高生を呼んでいいものなのか?


あっさりOKしてくれているが、俺は男としてみていないとか?


危機感全く持ってないとか?


わかんねぇ…。)




「え、ほんとにくるの?」




「あっ、冗談だったの?だめ?」




こんなに可愛い子に上目使いで首を傾げられ「だめ?」なんてお願いされると、拒否できる男子なんてこの世にいないと思う。




現にいま俺はそういう状況に陥っている訳であり、君のこと気になってて何かハプニングが起こるかもしれないから来ないでなんて、言えるわけもなく…。




「だめじゃないよ!今週末めっちゃ暇だから!休日じゃなくても大体暇だからいつでもいいよ!」




なんて言って、必死だなと自分でもつくづく思う。




これを気に彼女を作るチャンス!なんてねw




もっと彼女のことを知りたいと思ったし仲良くなりたいと思ったのも事実だから。




「そっかぁ。んー、じゃあ土曜日でもいいかな?」




「わかった。土曜日な!なんか食べたいものとかある?嫌いな食べ物、ある?」




今聞いておけばもし作れないものでも練習できる、好みを把握しないとな!




「んー、嫌いなものか、あんまりないかも。うーん…じゃあ、えっと、お、オムライスとかどうですか!」




オムライス?作ったことはないが練習したら作れそうな気がする。




「OK!楽しみにしてて?」




「うん!すごく楽しみっ!


あっ、何時に行けばいいのかな?」




「あー、昼くらいでいいんじゃね?12時、とかかな。そうだ、携帯持ってる?」




「12時ね!わかった。持ってるよ?」




「連絡とかとりやすいほうがいいかなって、思って、LINE、交換しない?」




「いいよ!ふるふる?」




「どっちでも。」




ふるふるで連絡先入手!嬉しい。




自然と顔がにやける。




彼女の家の前についた。




「俺の家、あれ。」




斜め前の家を指さす。




「あの家!?この前できたばかりのとこだよね?おっきい!あのお家に1人かぁ。」




「使ってるのはリビングと風呂とトイレと一部屋だけだけどな。」




「そっかぁ、そうなるよねぇ。」




なんだか会話が暗くなっている気がする。




「あ、明日!朝何時に学校行く?迎えに来るけど。」




「あ、ありがとう、えっとね、7時半とかどうかな?ギリギリかな?」




「7時半か。大丈夫だろ!


じゃあ、明日な!」




「うん!明日、ね!」




彼女が家に入るのを見届けて、家まで歩く。




今日は楽しかったなぁなんて考えながら自然と笑ってしまった。




「オムライスかぁ。練習しなきゃ、な…。」




ひとりごちて、玄関の鍵をあけ、中にはいる。




鍵を閉めると、リビングに荷物を置き、隣の部屋のウォークインクローゼットで家着に着替える。




冷蔵庫の中を見ると空っぽだ。




見事に飲み物すら入っていない。




「…コンビニ、行くか。」




財布と携帯をスウェットのポケットに入れ込むと、鍵をもって外へ出た。




外へ出たまでは良かったが、引っ越してきたばかりだ。道がわかるわけがなく…




「まあ、覚えるしかないよなぁ。」




とつぶやき、適当な方向に歩き出した。




迷ったら携帯で検索してナビで帰ればいいかなんて考えながら、住宅街を歩く。




10分ほど歩くと、商店街が見えてきた。




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