choice 01
プロローグ ①業火
燃え盛る炎…。
それは恐ろしくもあり、時には美しさを感じる事すらある。
その炎が激しく焼いているのは、高層マンション…。
逃げ延びた人や、脱出した時に力尽き倒れている人…、体に火が纏わり付きもがき苦しんでいる人など様々だ。
倒れている人の一人が、儚い目で炎をみている。
その人は思った…。私は死ぬのか?と…。いや、むしろこのまま死にたいとすら思った。
死に場所を探していたのかもしれない…。
結局私は何も出来なかった…。救う事も、守る事も…。
この間違った世界では、私は無力だ。
だが、死に場所がようやく見つかり、やっと終わる事ができる。
その頃ようやく地元警察や、救助隊、消防隊などが到着し、救助作業にかかり始めた。
「This has a person!(こっちにも人がいるぞ!)」
消防隊の一人が、炎を見つめている人の方へ走ってきた。
倒れている人の状況を確認し、消防隊は叫んだ。
「Still lives!(まだ生きてるぞ!)」
私を助けるのか?
「Hey doctor!Come to this place early!(先生!早くこっちにも来てくれ!)」
先生と呼ばれる人物は、駆け足で消防隊の方へ向かってくる。
こっちへ来るな…、もう…死なせてくれ…。たの、む…。
ここで意識が途絶えた…。
高層マンションを焼き尽くす業火の原因は、富裕層を狙ったテロ行為であったことが後で分かった。
世界各国で貧富格差が広がる事は今の時代珍しくはなく、この国も例外ではない。
この高層マンションは、ただ単純に富裕層だけが住んでいるだけでなく、政府関係者の人間も数名住んでいて、テロの標的になる理由はある。
今起こったこのテロ事件は、数多くある事件の一つにすぎなかったが…、後にこの事件をきっかけに、世界を動かそうとする、人物が現れるのを、今は誰も知ることはなかった…。