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そう言うと九条は自己紹介の場を仕切りだした。
この九条という男性は仕切りたがりで、流石、実業家で、政治家の息子だ。
九条の仕切りで、他の乗客が順番に自己紹介を始めた。
和服を着た男性は、堂島 光一(どうじま こういち)52歳。有名な茶道家らしい。
ただ体格がかなり筋肉質で、体が大きいのが着物の上からでも分かるくらいだ。
顔も、気難しく、茶道家より、格闘家に見える。
光一の隣に座っている女性が、光一の妻、堂島 サキ 50歳。
光一とは対照的に優しそうな印象で、和服も良く似合い、和服美人のお手本のような女性だ。
その隣に座っている、女性の二組は。
結城 愛美(ゆうき まなみ)。
岸川 容子(きしかわ ようこ)。
共に26歳で大手商社の星城商事(せいじょうしょうじ)の事務員で、愛美は赤茶色のセミロングの髪で今時の女子と、言った感じだ。
容子はそれと、対照的で黒のボブカットに眼鏡をかけている。ただドレスを着ている為か、地味といった印象はない。
最後に左端に座っている男性が、小林 順平(こばやし じゅんぺい)19歳。最年少だ。
順平はプログラマーを目指す専門学生で、色白で髪はオシャレな黒い短髪で、これまたオシャレな黒渕眼鏡をかけている。
乗客十人全員の自己紹介が終わったところで、九条が再び仕切りだした。
「それでは皆さんグラスを…」
全員がグラスを手に持ったのを確認し、九条は再び言った。
「では皆さん、これから一週間楽しい旅路になるよう……………。そもそも僕が政界に進出しないのは………………。僕が経営する会社でも、こういった席は多々ありますが…………………………。」
九条は一人延々と乾杯の挨拶をしている。いや、これは演説だ。
本当に政界進出しないのか?と、思うほどとにかく長い。
九条の演説に歩がヤジを飛ばした。
「長いぞ!早く飲ませろ!国会議員かお前は!」