choice 01
皆のいる時計台に葵と歩が、戻って来た。
いち早く美夢が葵に駆け寄る。
「何してたのよ!かってな行動はだめでしょっ!」
「すまない…だが、なかなか良いリゾート地だぞ…プールもあった」
葵は美夢を心配させないよう、あえて自分が思う不可解な事は言わなかった。
九条と船長の山村も、歩の方に向かい何かしら話している。
すると歩が葵を呼んだ。
「葵君…ちょっと…」
葵は美夢に有紀や、順平のいる所で待つ様に指示し、歩達の方へ向かった。
歩が葵に言った。
「九条が上手く誤魔化してくれたようだよ」
葵が言った。
「どの様に?いや、それより…山村船長…ここは何なんですか?」
山村は少し混乱しているのか、訳がわからないといった表情で言った。
「私にもさっぱり…」
葵が言った。
「でしょうね…、聞いていた話と違う…もしくは、そもそも何も知らないと、いったところですか…」
九条が驚いた表情で言った。
「葵君の言う通りだよ、よく分かったね…船長は何も知らないらしい…」
葵は淡々と言った。
「まず一つは…船長や助手のスタッフまで気を失っているのは変です」
九条が興味津々で聞いた。
「それと?」
「船長はコックなども兼任してました…、なら船長か料理を創っている間、誰が船を操縦しますか?」
歩が少し目を広げて言った。
「そうか…、オートパイロットか!」
葵が言った。
「そうです。おおかた主催者に「オートパイロットが目的地まで運んでくれる、だから接客業を重視しろ」と言われたって、ところでしょう」
山村が言った。
「はい、月島様の仰る通りです。先程九条様にもご説明しましたが、私も助手の一ノ瀬も書類選考だけで採用されましたので、オーナーとは会った事がないのです」
歩は不思議そうに言った。
「よく、怪しまなかったねぇ…」
山村は少しためらって、少し暗い表情で言った。
「恥ずかしながら、報酬額良かったものですから…」
九条が山村の様子を察して言った。
「これ以上はヤボだ…よそう」
葵が言った。
「山村船長…、方位磁針を見せてもらっていいですか?」
山村は驚いた様に言った。
「え、ええ…持ってますが、よくおわかりになりましたね…」
葵は山村から方位磁針を受け取り、淡々と答えた。
「ええ…いくらオートパイロットとはいえ、トラブルがないとは言いきれませんから…他の業務を行いながら方角をチェックするには、常に携帯しなければいけませんからね」
山村から受け取った方位磁針は、懐中時計のように蓋がついている。
葵は蓋を開け、方角を確認したが、すぐに異変に気付いた。
「やはり…」
そう言うと葵は三人に方位磁針を見せた。
三人には驚き、そして歩が言った。
「これはっ!?」
磁針は方向を示す事なく、クルクル回っている。