花檻
Ⅰ
「……昔、男ありけり。
伊勢物語では大体この形で始まります。
歌物語と呼ばれ………」
春の暖かい気温。
お弁当の後の6時間目の授業。
しかも、苦手で嫌いな古典。
居眠り要素が揃っていた。
窓際、後ろから2番目の席で呉葉は大きな欠伸をする。
意識はもはや、朦朧としていた。
ここで寝ては減点される。
ただでさえ呉葉は、古典の成績があまりよろしくないのだ。
これ以上減点されては困る。