男子と会話はできません
水族館に着いた。最近出来たばかりで日曜日ということも伴って混雑している。
並びながら、四人一緒にいるはずなのに、少し距離を空けながら男子と女子でわかれて並ぶ。
時折、ぽつぽつと話すけどちょっとぎこちない。実咲ちゃんは人見知りしないのか、なんでも明るく受け答えするけど、それとなく市ノ瀬くんの話には控えめに反応するから、わたしにもしかしたら気を遣っているのかもしれない。
入り口を過ぎてすぐ頭上にある水槽を見上げた。
卵形で赤くごつごつした突起物のついた表皮に覆われている生き物が吊り下げられている。太陽の光が差し込み幻想的。
マボヤと書いていた。海のパイナップルと呼ばれている生き物だ。
「下から見るの初めてなんだけど。なんかすごいね。ていうかホヤ、水族館で初めて見た。なんかうけるー」
実咲ちゃんが言った。
「わたしもスーパーでしか見たことないよ。でもホヤ食べれないからなー」とひとり呟くと、
後ろにいた隼人くんが、「水族館に来て食べること考えるってね」と優しく言った。
「あっ……お腹……すいてるわけじゃないよ?」
「知ってる。嫌いなもの多いよね。昔から」
「うん」と、頷く。恥ずかしい。確かに見る視点間違えてる。