男子と会話はできません

周りを見ながらゆっくり歩いてた。


『高塚』


『ん?』


『危ないよ』


わたしを抱き寄せるようにして、庇った。


横を酔っ払ったおじさんがビールを持って歩いていった。


『あ……ありがとう』


『あんなのかけられたら、最悪だから。ていうか出店見てたでしょ?なんか食べる?』


『うん。実は出店、気になってた……あっていうか、みんな先行っちゃってるよ?』


『いいよ。はぐれればいい』


隼人くんは静かに言った。お祭りの音楽に消えそうなくらいなのに、しっかりわたしの耳に届く。心臓の位置がきちんとわかるくらい、ドキンとした。


かき氷を二つ買った。隼人くんはブルーハワイで、わたしはレモン。


屋台と屋台の間を抜けると、神社に続く石畳の階段が見えた。大きな杉の木の下、人ごみから離れると少し涼しい。


アナウンスが流れて、花火が間もなく始まることを告げる。
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