男子と会話はできません
9(side.H)
「はーやと」
語尾に音符でもついているみたいに弾むように呼んだのは、市ノ瀬だった。
「なに?」
「面貸せ」
「嫌だ」
「お前クラス離れただけで、何冷たくなってんだよ」
「はいはいわかったわかった」
少し早めに昼休みの体育館に行くと珍しく人がいなかった。
いつもなら、バスケをする生徒が集まり始めているのに。
「ラッキー」と、市ノ瀬はバスケットボールを取ってくるとその場でドリブルをする。
「あのさ、俺、お前に訊きたいことあんだ」
「何?」
「羽麗ちゃんと付き合ってたって、本当?」
と言うと、バスケットボールを勢いよくパスした。