男子と会話はできません
◇
何かに気を取られた油断した顔、フェイントをかけ抜かす。そのままシュートを決めた。バスケットゴールのネットが揺れる。市ノ瀬に言った。
「付き合ってたよ」
「なんだよ。それ、バカ」と、ボールを拾ってまた俺に投げつけた。そのまま立ち止まって言った。
「なんだよって仕方ないじゃん。本当のことだし」
「まじかまじかまじかまじか」
「好きなんでしょ?」
「はっ?」
「高塚のこと。二人きりにさせてなんて俺に言うくらいだし」
今度は市ノ瀬が俺の持っていたボールを奪い取った。
今までやる気もなかったくせに、急にひとりコートを思い切り走りだして、レイアップシュートを決めた。
振り返って言った。
「俺は好きだけど。隼人は?」