男子と会話はできません
10(side.U)
みんなと遊びに行ってから数日後の放課後。
「おっ。高塚、元気かー?」
廊下で声をかけられた。鮫島先生だった。
「げ……元気です」
小声で答えると、「それのどこが元気なんだぁ?たまには部活、顔出せよー。花が寂しがってるぞ」と、笑いながら行ってしまった。
幽霊部員のわたしにさえ、気さくに声をかける先生は、生徒との距離を縮めるのが上手だと思う。
いつもジャージに整髪料もつけていない気の抜けた髪をしていて、一見体育会系に見えるけど、威圧感を与えない。
30代前半というけれどそんな親しみやすさから、密かに思いを寄せてる子もいるっぽい。
実咲ちゃんは、園芸部を辞めた。
鮫島先生は聞いたときどう思ったんだろう。
「高塚」
「あ、隼人くん」
「鮫島先生になんか言われた?」
「あ……部活来いって、幽霊部員だからって」
「へえ。園芸部だっけ?そんなに活動してるの?」
「たまにしてるっぽいけど、わたしもあんまり顔出さないからわかんないな」
下駄箱で靴を履き替える。隼人くんは部活だろうなと思っていたのに、運動場に向かわなかった。