男子と会話はできません
家に帰ると幸子さんは散歩から帰ってきたばかりだったみたいで、ぐでんと床に寝そべっていた。
「なんだぁ。行ってくれるなら待てば良かったぁ」なんていうママ。たまにちょっと面倒くさがりだ。
仕方ないからひとりで待ち合わせの橋の前に向かった。
ここで会うのは、あの別れた日以来で、隼人くんが今日も先に来ていた。
一瞬、胸がざわざわしたけど大人っぽくなった隼人くんがいるから、あの日と違うんだって意識が今に返ってくる。
「ごめんね。遅くなって」
「ううん」
「あっ、ボストンテリア?かーわいい」と、足元にいる隼人くんの犬に、しゃがんで声をかけた。
触れても嫌がらず、人懐っこい。
「うちのもう散歩行ってたから、連れてこなかったよ。この子、名前はなんて言うの?」
「一応、モコ」
「一応なの?あっ、またおばあちゃん?」
笑って言うと、「そうまた。勝手にモモコって、ばあちゃんだけ呼び始めちゃって……また名前変わっちゃったんだよね」と肩をすくめた。