男子と会話はできません

「付き合ってるんじゃないよね?」


「付き合ってはいないよ」


「まさか好きとかじゃないよね」


「友達」


「だよね?あー良かった」と、わざとらしく安堵する。


「じゃあさ、市ノ瀬と仲良くしないでね」


仲良くするなというのは、きっともう話したりするなってことだろう。


うんって頷くのは簡単だけど、この前、市ノ瀬くんに話をするって言ったのに、急に避けるなんてことしたらどんな顔するんだろう。


そう考えると、頷くことには躊躇いがあった。


「聞いてんの?」と、わたしの肩を強く押した。


「つうかさ、女子との態度違いすぎだよね」


「男子の前でわざと可愛く見せてない?」


「ぶりっこ」


周りにいた子が次々に、わたしに非難の言葉を浴びせてきた。


「そういう子って女子から嫌われやすいから、気をつけたほうがいいと思うよ?」


主犯格の子が、足元にあったジョウロを持つと、まるでバケツの水をかけるみたいに豪快にかけた。


咄嗟に避けようとしたけど無理で、ざっと身体の片側半分が濡れて、重くなった。


「警告」


冷たく言い放つと、そのまま行ってしまった。
< 176 / 459 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop