男子と会話はできません
「付き合ってるんじゃないよね?」
「付き合ってはいないよ」
「まさか好きとかじゃないよね」
「友達」
「だよね?あー良かった」と、わざとらしく安堵する。
「じゃあさ、市ノ瀬と仲良くしないでね」
仲良くするなというのは、きっともう話したりするなってことだろう。
うんって頷くのは簡単だけど、この前、市ノ瀬くんに話をするって言ったのに、急に避けるなんてことしたらどんな顔するんだろう。
そう考えると、頷くことには躊躇いがあった。
「聞いてんの?」と、わたしの肩を強く押した。
「つうかさ、女子との態度違いすぎだよね」
「男子の前でわざと可愛く見せてない?」
「ぶりっこ」
周りにいた子が次々に、わたしに非難の言葉を浴びせてきた。
「そういう子って女子から嫌われやすいから、気をつけたほうがいいと思うよ?」
主犯格の子が、足元にあったジョウロを持つと、まるでバケツの水をかけるみたいに豪快にかけた。
咄嗟に避けようとしたけど無理で、ざっと身体の片側半分が濡れて、重くなった。
「警告」
冷たく言い放つと、そのまま行ってしまった。