男子と会話はできません

こんなのってあるんだ。


妙に冷静だったのは、たぶん呼び出されたときから感じていた違和感があったからかもしれない。少し笑えた。


「高塚、大丈夫かー?」


声がしてはっとした。一階の校舎の窓、そこから顔を出したのは、鮫島先生だったからだ。


そこでようやく動揺した。


さっきまでどこか他人事に見てたんだ。


ようやく人に見られて恥ずかしいことをされたのは自分自身だって、自覚した。


「だ……大丈夫です」


先生は「動くなよ」とわたしに言うと、非常扉から出てきて、わたしの肩に着ていたジャージをかけた。少し煙草くさい大人の男の人の匂いがした。


「怪我ないか?」


いつから見てたんだろう。ただ頷いた。


それよりも先生が今のことを問題にしたら、学校中に広まってしまうかもしれない。そうなったら、誰にも顔を合わせられない。


なんて言って誤魔化そう。言い訳には苦しいくらいのことはされている。


だけど先生は思ってもみないことを聞いてきた。


「先生は先生だから、あいつらに注意できるけど、どーする?」
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