男子と会話はできません
「えっ?」
どーするって、わたしの判断に任せるっていうのかな?
嫌がらせを受けたことを、他の先生にも言わないでいてくれるのかな。
本当かな?
「……何もありませんでした」と、咄嗟に口から出た。
「そうか。じゃあ先生も何も見てない。それでいいのか?」
「はい」と頷いた。
それから頭の中はどうやって帰るかということに悩み出す。着ていたシャツは透けて肌に張り付いてる。ベストだってぐっしょりだ。こんな格好で歩くのおかしいよね。
「高塚?」
呼ばれてまた我に返った。見なかったことにしたはずなのに、わたしが放心していたせいか、先生は話を蒸し返した。
「怖かったか?」
首を横に振った。少し先生が笑った気がした。強がりだと思われたのかもしれない。
「正直、やりすぎだと思うから、俺は言いたいけどな。今日だけか?」
こくりと頷いた。
そうかと呟くと続けた。
「まあ、ああいう悪口ってやつはさ、相手の悩みを打ち明けられているようなものだと思うなー、俺は」
「……」
「自分の嫌いな部分ってあったりするだろ?それと同じものを高塚から感じとれたから、頭にきたんだよ。人って自分がわかるものにしか反応できないだろ」
だから同じようなものをお互い持ってんだよなーと、言った。