男子と会話はできません

「ごめん」と、隼人くんは、手を膝の上に置いた。


「ううん。ごめん。ちょっと嫌なことあって」


「そう」


「……」


「……」


「訊かないんだね」


「訊きたいよ。本当はすごく訊きたい」


ははっと口から笑いがこぼれた。


「どこか行く?」隼人は言った。


「えっ?」


「どこか遠く。二人で」


「えっ……と」


「嘘。家、来る?」


「隼人くん、見てたの?」


驚いて顔をあげた。


「見てないけど、鞄、パンパンだから。制服、汚したの?」


首を横に振った。


「高塚がさ、訊いてほしいって思ってるときくらい頼りなよ」


笑いもせずに言うから、強ばっていた心が少しずつ柔らかくなっていく。


「隼人くんちで……制服、乾かしてもいいかな?」


だから、そう言えた。
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