男子と会話はできません
◇
翌朝、本当に隼人くんが迎えに来てくれた。
バス停までの道を一緒に歩く。昨日のことには触れないから、気が楽だった。
満員のバスの中は、あまり話せなかったけど、揺れでたまに身体がぶつかったりするから、心臓がいちいちうるさい。
下駄箱で靴を履きかえると、目に留まったのは、昨日いたあの子だった。
向こうもわたしに気が付いたのか、目が合った。少しだけ口角があがる。
だけど、その視線は隣にいた隼人くんに移った。
それに気が付いたのか「高塚、あれ?」と、彼女が先に行くと隼人くんは訊いた。
「確か、市ノ瀬と付き合ってたから」
迷いながら頷いた。
「俺と付き合ってるって思えばいいのにね」
「えっ?」
「高塚に他に彼氏がいたら、もうあんなこと言われない」
「そっか……そうだよね。でも彼氏なんて、出来ないからな」と首を傾げた。