男子と会話はできません
「行実先輩」
呼び止めたのは、若槻希々歌(ワカツキノノカ)だった。
「お―っ」
もともと中学のバスケ部の後輩で、高校に入ってからもマネージャーとして関わっている。
「今週の日曜日の練習試合なんですけど」と、伝達事項を伝え終えると、「今日一緒に帰りませんか?」と誘いをかけてきた。
「なんで?」と微笑んで訊く。いつもの若槻とのやりとり。大体は笑顔でかわす。
若槻が俺のことを名前で呼び始めたのは、高校に入学してからのことだったと思う。
中学のときは、市ノ瀬先輩と呼んでいたはずだったから、最初の頃は少し違和感を感じたけどもう慣れた。
こうして誘いをかけられたり、断ったりするのも。
若槻を見てると、俺と似ているなと思う。だから絶対、好きにならない。
そういうのって、はっきりわかるんだ。