男子と会話はできません
◇
「おはよう。杏奈」
「おはよう」
四月。
高校二年生に無事進級したわたしは、運良く親友の石川杏奈(イシカワアンナ)と同じクラスになった。
ちょっと人見知りをするわたしにとっては、このうえなくラッキーな話。
だけど、ラッキーの裏側にはもうひとつ大きなアンラッキーが隠れている。
「いや今回はクラス離してほしかったわ」
机に鞄をかけると、わたしの後ろの席に座る杏奈。
「えっ?嘘。意地悪」
そう言いながらも、わたしは胸のドキドキを抑えられなくて、いつ来るんだろういつ来るんだろうと、その人が来るのを待っていた。
「隼人、おはよう」
黒板に背を向けて座るわたしの後方、胸を高鳴らせる相手の名前が呼ばれた。
後ろ、振り向けない。
「はよ」
この声。